『aroma』とは『芳香』を意味する言葉です。
人間と香り(香草)の関係は古く、儀式での捧げ物として、薬として、また異性への媚薬として、様々なことに用いられてきました。
古代文明発祥の地、エジプトにある有名なツタンカーメン王の墓の埋葬品からは多数の香油壺が発見されています。
その一部からは、3000年以上経っても香りが残っていたままだったとか。
また、エジプトと言えば世界三大美女のクレオパトラ。彼女はバラの香りを好み、バラの花びらを床に敷き詰めていたと言います。
強い太陽光線の照りつけるエジプトでは肌を乾燥から守るため、入浴後精油を塗り込む習慣がありました。
また、新約聖書には聖母マリアから生まれたばかりのイエス・キリストに東方からやってきた三人の賢者が三つの贈り物をした、と記載されています。当時最も高価だった三つの贈り物とは黄金と乳香、没薬ですが、乳香は減殺で言うところのフランキンセンス、没薬はミルラにあたります。
ちなみに、ミルラはエジプトではミイラを作る際の防腐剤としても用いられてきました。
価値ある香料は最初は王族や神官、そして貴族といった特権階級だけの物ではありましたが、徐々に民間にも広がって行きました。
アロマテラピーを日本語に訳すと芳香療法ということばになりますが、もともと西洋に限らず世界中で香料は医薬に用いられていました。
紀元前三世紀に生きたテオフラストスはその著書『植物史』のなかでアラビアの香料について言及しています。
また、医学の父とうたわれるヒポクラテスは「芳香風呂に入り、香油マッサージをすることで健康になる」と述べています。
アラブ圏では、水が少なかったため、頻繁に身体を清めることができませんでした.そのため、体臭を消すために香料を持ち歩いたと言われています。香水の発祥はこれほど古い物だったのですね。
11世紀にはイスラムの医師であるイブン・シーナーにより、蒸留により芳香成分(精油)だけを抽出する方法が発見され、当時世界で最も進んでいると言われていたイスラム医学に応用されるようになりました。
これが、アロマテラピーの原型と考えられています。
16世紀に入ると、ヨーロッパでは芳香療法は書物として体型づけられ、さらに頻繁に用いられるようになりました。
また、若返りの薬としても珍重され、当時70歳だったハンガリー王妃エリザベートが使用した『ハンガリーウォーター』は特に有名です。
翻って我が国日本でも香りの文化は古く、『日本書紀』にも記述が見られます。
平安時代には衣に香を焚きしめて香りを身にまとっていたことは、『源氏物語』や『枕草子』といった書物からうかがい知ることができます。
このように、洋の東西を問わず、香りは私たちの生活に密着していたのです。
アロマテラピーという言葉20世紀に入ってからフランス人の科学者ジャン・モーリス・ガットフォセによって作られた造語です。
日本に紹介されたのは1980年代になってからで、とても歴史の浅いものです。
芳香の効果は古来より認められてきましたが、現代では医学的な治療目的で使われるより、草木本来の香りによってもたらされる癒し効果を狙っての利用が多くなっていますが、最近では代替医療として注目を浴びつつあります。
しかし、精油の使用には注意も必要であり、使用する場合は専門家の指示のもとで安全に使うことが大事だと言えます。